ラグドールの歴史と開発

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第2章 原型となった猫たちと2系列に分類される子孫
オリジナルの「ラグドール」

    オリジナルの「ラグドール」猫は、現在知られている「ポインテッド」パターンと、そうでないものがあったようです。特にその中で選別交配されたのが、「ポインテッド」という範疇にはいるものでした。早期の家系図には、「ブラック&ホワイト」「トーティ」「ミンク」「スモーク」「リンクス」のような様々なカラーが見られる、と主張するブリーダーもいます。また実際にこれらの色の家系図も信頼できる団体のもののなかで存在します。もっとも、これがラグドールの開発のどの時期かを特定するのは、易しいことではないでしょうが、ラグドールの壮大な家系図として毎年更新されている「遺伝子チャート」には、上記の様々なカラーのラグドールも登録されていますから、存在することはたしかでしょう。
    もちろん、それが各登録団体に受け入れられるか、あるいは、各ラグドールクラブで多様な毛色が識別可能である、と判断するかどうかは、別の次元のことです。

基礎猫は3頭

    「ラグドール」猫は、1頭の牡猫(「ダディ・ワァバークス」)と2匹の雌猫(「フィジャナ」・「バックウイート」)を基礎としています。

1頭の牡猫(「ダディ・ワァバークス」)

    基礎となった牡猫は「ダディ・ワァバークス」と呼ばれました。彼は「ペルシャタイプ」の白毛をした外飼い猫の母「ジョセフィン」と、外飼い猫の牡を父として生まれた猫です。この父猫を見た者はおらず、どんな猫であったかは、知られていません。息子として生まれた「ダディ・ワァバークス」の姿は、現在の「ミテッド」柄に近く、アンベーカー婦人が大変愛した柄だったと言われています。また「ダディ」とあるように、「ラグドール」猫の計画交配の「父」となる猫です。彼女は特にダイアモンドブレーズ入りのシールミテッドが好きだったと語り継がれています。CFA(アメリカの血統猫登録団体)から発行されている血統猫紹介のイラストのポスターには、このダイアモンドブレーズの猫が描かれています。CFAでは現在のところ(2001年時点)チャンピョンシップとして認められているバイカラーではなく、ブレーズ入りのミテッドというのが大変興味深いものがあります。

2頭の雌猫(「バックウィート」と「フィジャナ」)

    2匹の雌猫の一方は「バックウィート」と呼ばれる猫です。
彼女は「ジョセフィン」と、「ジョセフィン」の息子「ブレッキー」という牡猫から生まれました。「バックウィート」の姿は、黒の単色で、いわゆる、「ソリッド」に区分される色です。「バックウィート」は「ダディ・ワァバークス」と雌猫の「バーミーズ」との交配から生まれたと言い伝えられていましたが、雌猫は「バーミーズ」というよりは、被毛が厚かったようです。つまり「バーミーズタイプ」の猫であったらしく、また「サイアミーズ」との交配はなかったとも指摘されています。「バックウィート」の父猫である「ブレッキー」の姿は、ペルシャのようで黒とブラウンの中間色で、名前は「ブレッキー」と命名されました。
    2匹の雌のもう一方は、「フィジャナ」という猫です。
彼女は「ジョセフィン」と「ジョセフィン」の息子「ダディ・ワァバークス」との間に生まれました。姿は現在の「バイカラー」パターンに近いのですが、鼻の上の逆V字は、大きく開き、耳に近い部分のみが色づいている猫でした。
    「ダディ・ワァバークス」と「ブレッキー」は、どちらも「ジョセフィン」の息子ですが、一腹子ではなかった、とアンベーカー婦人は、取材したイギリスのブリーダーに明言しています。

2系列に分類される子孫

   アンベーカー婦人は、以上の3頭、すなわち「ダディ・ワァバークス」・「バックウィート」・「フィジャナ」の基礎猫から生まれる猫を、雌猫の色のタイプで2系列に分類しました。
    一方は、「バックウィート」、他方は「フィジャナ」です。
    この分類は、「バックウィート」が全身に色が出ており白を持っていなかったことから「The Dark Side」(以下「ダーク・サイド」とよぶ)、「フィジャナ」が、白色を多く持って明るかったことから「The Light Side」(以下「ライト・サイド」とよぶ)と命名されました。

「ダーク・サイド」(The Dark Side)

    「ダディ・バークス」と「バックウィート」の交配から生まれたのが、「キョウト」(シールミテッド♂)と「ティキ」(シールカラーポイント♀)でした。
    これらを交配して生まれたのが、「クッキー」(シールカラーポイント♂)「クッキーツー」(シールミテッド♂)「バンビ」(シールミテッド♀)「トイ・スー」(シールミテッド♀)「トイ・リング」(シールカラーポイント♀)などです。

「ライト・サイド」(The Light Side)

    「フィジャナ」と「ダーク・サイド」で生まれた上記の牡猫たちと交配させ、白色の分量を多く持った猫がこの区分に入ります。

「遺伝子チャート」

    「ラグドール」猫が作出されてから、36年以上経ちますが、この間に交配されたラグドールの系図をまとめたものが「RFC」(Ragdoll Society)、(現在は「RFCI」(Ragdoll Fanciers Club International)と改名)作成の「遺伝子チャート」です。これはノースアメリカを中心として、毎年更新されるもので、登録頭数は1999年版で3600頭です。

色の拡大:ブルーの場合

    開発当初、選別交配の対象となった猫達は、「ポインテッド」パターンの猫で、色は「シール」色でした。この色は優性遺伝子の働きから生み出されるもので、たとえ片親から譲り受けただけでも発色します。ところが、繰り替えし交配が重ねられることによって、劣性遺伝子の「シールの稀釈遺伝子(ブルー)」が両親から一つずつ受け継がれ2つ揃うと「ブルー」の色がでます。
    このブルーが「遺伝子チャート」上で登場するのは、「ダーク・サイド」では、5代目。「ライト・サイド」では、6代目からです。こうして「ラグドール」の遺伝子プールは多様となり、選別交配の下地が作られていきました。

遺伝子チャートの利用

    遺伝子チャートを利用するのは有効です。この遺伝子チャートがスタートしたのにはわけがありました。青い目を持つ「ポインテッド」は、注意深くコントロールする必要があったからです。ラグドールはホワイトスポットとして知られるS遺伝子を運んでいます。バイカラー化がすすんでいく「ライトサイド」の猫は同じサイド同士での交配を避ける必要がありました。その上、前述の通り、ラグドールは少ない猫からスタートしました。将来における危険を少しでも回避するために、この遺伝子チャートは利用されてきました。

 The Definitive Guide to Ragdollsの著者の一人である、ローナさんが語るところによると、今から6年前(2000年時点より)まで、イギリスでは、「ライトサイド」の猫は、「ダークサイド」の猫とつがわせるなど、同じサイド同士を交配させないようにしていたそうです。

先天的疾患のない特性

    そのような、ケアフルブリーディングのおかげで、幸運なことにラグドールは先天的な疾患を持たない猫として知られています。一部、心臓疾患があるのではないか、という根拠のない噂が流れたと言われています。ラグドールの発祥の地、カリフォルニアで20年飼育をしているブリーダー達は、これに対し、一度たりともそのような先天的疾患を持つ猫は無かった、と明言しています。

入舎の手がかりとして

私の場合は、この「遺伝子チャート」を便りにして猫の輸入をしました。現在のところ(2000年時点)、スタッドとしての男の子を2頭、母猫になる女の子を3頭輸入しています。
    男の子は全て「ライトサイド」。カリフォルニアとワシントンからの女の子は、「ダークサイド」。カナダからは、「unknown side」(以下、「アンノウンサイド)です。
    「アンノウンサイド」には、始祖ジョセフィンからその猫に到る間にTICAやACFA頭のメジャーな協会に登録されず、家系図が途中でとぎれた猫たちが、登録されます。
    特にアメリカから海外に輸出された猫のために「アンノウンサイド」は機能しているようです。たとえば、日本に輸出されたラグドールをレイにします。ドメスティックの血統書が完備されていたら、TICAへの登録をしていない両親猫というのはあるはずです。これは、諸外国の地域性からも当然の成り行きといえるでしょう。このような経過をたどった猫の子孫たちは、アメリカを本部とするTICAなどの協会へは登録されないまま、子孫を残していきます。

上記、記事は「C.A.T.CREDO」会報にて、連載しているものに一部修正を加えたものです。
改訂稿2002・3・14


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