第5章 私のリンクス

 1998年9月、TICA/TCCのショーのことです。新しい毛色として日本で初めてリンクスを紹介しました。今から思うと隔世の感があります。当時、手本もない中で、口伝で教えられた毛色の特徴や見分け方を手がかりにブリードを始めました。それから5年。私のラインのひとつの区切りとしてここにまとめます。これが今後、他の方達への参考の一つとなれば幸いです。

基礎猫の輸入

  ブルーリンクスの女の子を私が輸入したのは 1998年6月でした。3月10日生まれの女の子の名前は、Stellarhart's Katsura。今年の3月で5才を迎えます。(2003/03/13時点)残すところ後1度だけの出産をして、母猫としてリタイアする予定でいます。彼女が、2002年9月までに生んだ子供達は、5回の出産で総勢26頭。その中には、将来の父母猫もいます。

リンクスライン

  現在のリンクスは、様々なラインから来ると言われています。その主なラインは、Rag2 Richキャテリーのスコティー クーンさんの猫です。彼女は晩年のアンベーカーさんと一緒にブリード活動をしました。
    ブリーダ自身や、メジャーな協会が新しい毛色を受け入れるまでには、時間がかかるものですが、当時賛否両論がある中、多くの人々がリンクスの基礎猫を入舎させていきました。その方法は、直接スコティさんのところから猫が購入される、あるいはエージェントなどを通す、などでした。


リンクスブリード

  桂(Katsura)は、Stud Book Traditionalになって4世代目のリンクスです。ですから、ラグドールとしてショー参加も出来、私自身がSBTを取得するため何世代も交配を繰り返す苦労はありませんでした。私が次にすべきことは、桂をリンクスの基礎として私自身の猫を生み出していくことでした。

  桂の相手として最初に選ばれた男の子は、Dreamdoll's Sakyoです。彼はシールミテッドで、桂と同じ誕生日に生まれました。一緒に海を渡って来ました。このペアは、桂の実家と左京(Sakyo)の実家によってアレンジされたものです。

  リンクスをブリードする場合、同じリンクス同士でペアリングすべきか、または従来のカラーの猫と交配する方がいいかという問題があります。4年前私が桂の実家に尋ねたところ、その答えは、後者でした。理由は、2つです。1つは初期に血統の近い交配があり、それを繰り返さないためです。新しい毛色を定着させるためには、いつもある課題です。もう一つは、タビーそのものが美しく顕れるという理由です。

  こうしてペアが私のためにアレンジされたわけですが、長年、同じラインを見続けて来た人にしかわからないペアの意図があったはずです。それが形として顕れるまで約2年掛かりました。正確に言うと、最初の出産をしてその子供達が1才を迎えたところで、明確な意図が実感できました。その意図は、頭部、胴、尾でした。
    左京は、オールドラインです。このタイプのラグドールの特徴は、耳と耳の間が、完全に平たく、頭蓋骨の骨格が正面から見ると菱形をしている点です。この頭部は、ややラウンドがちになるリンクスの頭部を上手くフォローします。また一般的にオールドタイプは、尾と胴が極めて長いようです。胴の長さはその後に増えていく体重を保証します。これにより初期のリンクスのやや短めの胴が改善されます。
  オールドラインの成長は、従来から言われている「5年経ってラグドールの身体は完成する」というタイプであり、生後1年未満には、まだその片鱗を見せるだけで成熟しきるところまではいきません。仔猫がブリードの結果を見せ始めるのに1年要した、という理由がこれでした。インスタントではない猫、といえるかもしれません。

    もちろん、すべての猫が生き物である以上、杓子定規に同じ基準ではかれるわけではないでしょう。私が知っている私の猫の場合をまとめます。幼少時と生後1才のリンクスの特徴です。


リンクスの見分け方

  私のリンクスは、生まれると2日後にその様子がわかります。場所は、耳です。耳朶の部分がいつまでも生まれたてのピンク色で色付きません。また、耳朶後方部分には、長めの白い産毛のようなものが目立ちます。これは、リンクスでない猫と比較すると違いがよくわかります。
    耳の様子は、成長するにしたがって、さらにはっきりしてきます。私自身のHPにも記事として載せましたが、リンクスとリンクスの違いは、耳の内側にあります。耳の内側がいつまでもピンクであるのがリンクスで、内側も色づくのが従来のカラーとなります。ですから、ブルーとブルーリンクスを、またシールとシールリンクスの耳の内部を比較するとその違いが明確です。
    以上が、乳児から生後3ヶ月までにわかる耳の様子です。見分けるためにもう一つの特徴があるといえば、それは鼻です。これは、耳の色づきとほぼ同時かそれより若干遅めに見えてきます。ラグドールはポインテッドですから、鼻革が最初に色づくのが一般的です。もちろんリンクスも身体の先端部分から色づいていくわけですが、鼻革全体ではなくアウトラインの色づきだけでしばらくピンクのままである場合があります。
  以上が、ポインテッドとしてのラグドールがその特徴をよくあらわす耳と鼻革の情報です。これらの場所は、従来の毛色と同様、多くの情報源となります。
  見分けるのは上記だけで充分ですが、リンクスの場合、さらに特徴があるとすれば、それは、下顎といえるでしょう。リンクスの下顎は、カラーポイントでも白いままです。つまりカラーポイントもミテッドもバイカラーも下顎は常にミテッドの下顎に近くなります。

  次は、生後1才頃の特徴です。
    1才くらいになると、鼻頭に特徴が顕れてきます。シールリンクスの場合はオレンジ。ブルーリンクスの場合は、薄いオレンジです。この黄味はブリックと呼ばれています。濃さは、身体全体の黄味の濃さと比例するようです。つまり、鼻頭 のオレンジが濃ければ身体全体の黄味も強く出ている、ということになります。この黄味は、出来るだけない方が美しく、タビーに関しては、背中部分には出ない方が良いとされています。私自身のリンクスはこの黄味が大変薄く、全体の黄味は最初からあまり出ませんでした。また、背中部分のタビーも極めて薄かったようです。黄味はタビーの特徴だとも言われており、この黄味を消すために様々な苦労がされているとも聞いています。たとえば、「シルバー遺伝子」という呼び方で知られている遺伝子を取り入れることによって、この黄味を無くすという試みです。私自身は幸運にもこの試みをすることなく、基礎猫を迎えることができました。


私がブリードタイプとして登録したリンクス

  2003年3月時点で、Stellarhart's Katsuraの次世代と次々世代のリンクスとして「ブリードタイプ」の登録をされた猫は、Kyotorags Asuka、Kyotorags Chayama、Kyotorags Cha Cha、Kyotorags Rin、Kyotorags Kyogoku、Kyotorags Hiyoshi、Kyotorags Little Katsuraです。それぞれの個性を生かしながら、さらに魅力的な猫を生み出していってくれると信じています。(2003/03/13時点)


私のリンクスの理想像

  アルターとしてショー参加したリンクスは、Kyotorags Goro、Kyotorags Jiro、Kyotorags Kyoの3頭です。彼ら3頭は、アルターの男の子としての私のリンクス像に近いでしょう。
    2003年3月には、博多でKyotorags Kyo(京くん)がショー参加しました。彼にとっても飼い主さんにとっても初めてのショー参加でした。結果は私なりに満足できるものでした。アルターの男の子として、久しぶりに会った彼は、美しいだけでなく、リンクスの抵抗力と賢さがあり、家猫としての魅力も十分備わっていました。


最後に

  最初の私の基礎猫として、ニューカラーであるリンクスを迎えることは、ある意味ではリスクともいえ、また同時にエキサイティングであったとも言えます。過ぎた数年を振り返り、これが私の育てた猫、といえることを誇りに感じます。
    今は、基礎猫を越えるためにブリードしながら、基礎猫の像に返っていくというルーチンを経験しています。


        2003/03/13脱稿(一部加筆)--credo 会報

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追加改訂(2005/5/23):
ブリードタイプとして登録されたリンクス

  「ブリードタイプ」の登録をされている猫は、Kyotorags Asuka、Kyotorags Chayama、Kyotorags Cha Cha、Kyotorags Rin、Kyotorags Kyogoku、Kyotorags Hiyoshi、Kyotorags Little Katsura、Kyotorags Hanaです。


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