ラグドールの歴史と開発

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第1章 「ラグドール」猫の伝説と真実

     『ラグドールは、「牡のシールポイントのバーマン」と「白い雌のペルシャ」によって生まれた子の中の「牡1頭」と「雌のバーミーズ」で繁殖された。』

   これは、世界中のブリーダーたちに、長い間信じられてきた「伝説」です。しかし、真実は幾分違います。正確には「バーマンタイプ」」と「ペルシャタイプ」、そして「バーミーズタイプ」の猫によって交配された血統猫といえます。
    ここで注目したいのは、「タイプ」という言葉です。「タイプ」とはラグドールの古いブリーダーたちが好んで使用した「外観」を意味します。つまり「ラグドール」の原型を作り上げた最初の猫たちは、上記の血統猫の「外観」を持っていたに過ぎなかったということです。これは、血統猫同士の交配を意味しません。「ラグドール」とは、外を自由に歩いていた猫同士の、偶然の作出からスタートした猫種だったのです。
    外を自由に歩いていた猫たちのため、その猫自身の来歴はわかりません。先祖にどんな猫がいたかもわからない。このことから、猫たちが多様な形質を先祖から受け継いでいる可能性が高いとも言えますし、同時に多様な可能性に満ちた猫種だといえるかもしれません。
    日本語で書かれている種の誕生の解説には、「type」もしくは「look」の部分の翻訳がしばしば欠けています。古い資料をもとに編集され、踏襲と孫引きがくっりかえされる事によって、この誤謬が受け継がれたのだと推察されます。これを修正し広く知らしめることは、ラグドールブリーダーにとって、重要な課題となっています。
    毎月アメリカで発行される「キャットファンシー」(2000年3月号)ですら、ラグドール種の紹介ページで、この間違いを犯しました。これに対し、アメリカのブリーダーたちは、大変ナーバスになっています。なぜなら「type」の削除は、ラグドールの独自性を損なうものと考えるからです。

1962年人為交配のスタート

    1962年、アメリカ、カリフォルニア、リバーサイドに住む「アン・ベーカー」という女性が「ラグドール」猫の交配をスタートさせました。始祖となる「ジョセフィン」という雌猫は、長く薄い白毛の「ペルシャタイプ」で、外を自由に歩いている 猫でした。「ジョセフィン」は、アンベーカー婦人の知人、ペネルズ夫人の裏庭に出入りしていました。ある日、「ジョセフィン」は交通事故に遭い、ペネルズ夫人に保護されます。その後、交通事故から身体が癒えた「ジョセフィン」は、夫人を信頼したのか、ペネルズ夫人の裏庭でお産をしました。
    「ジョセフィン」が生んだ仔猫は、著しく大きく、美しく、また被毛は、セミロングで、毛玉にならず、もつれることはありませんでした。また、仔猫の気質は、非常に優しく、抱かれたり、運ばれるとき、完全に弛緩していました。この気質と身体的特徴が、アンベーカー婦人の興味を引いたと言われています。彼女は様々な色の異なる猫と共に「ジョセフィン」の子孫を育てることにしました。こうして、彼女の元で生まれた猫は、「Raggedy Ann」という猫舎号が猫の個体名の前に名字としてつくようになりました。
    アンベーカー婦人は、交通事故の前には、この弛緩する身体的特徴がなく、事故の後、「ジョセフィン」が偶然獲得したものだ、と主張しました。
    事故後に猫の形質が変わった、とする主張に対して、疑問を投げかける人がいます。彼らの主張は、「後天的に遺伝子が変化することはない」というものです。一方最近の研究では、「遺伝子は、後天的に変化しうる可能性のあるもの」という報告もあります。
    また、アンベーカー婦人は、ラグドールが「痛みを感じない猫」であると、人々に宣伝しました。これは「ラグドール」の神秘的な「伝説」として、語り継がれたものの一つですが、現在では「誇大広告」として扱われ ています。これに関しては、ラスゴー大学のナッシュ博士が、2頭のラグドールについてテストし、科学的に誤っていることを立証しました。

    「ラグドール」は「Rag」と「Doll」による造語です。
「布きれのように柔らかいぬいぐるみ」という意味で、身体的特徴から来ています。ですから、これはラグドールの特徴の重要な要素の一つといえます。ブリーダーたちはこの身体的特徴をしばしば「floppy」とか「Raggy」という言葉であらわしたり、「まるで骨がないかのよう」と言います。

上記、記事は「C.A.T.CREDO」会報にて、連載しているものに一部修正を加えたものです。改訂稿2002・3・14


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